記念生贄

先日の夕立で部屋の全てを失い照明の灯りもなく断続的に水滴の落ちる湿った部屋で私は思案に耽っていた。(この日記を始めて今日で一月になる。何か祝おう)考えあぐねた末、停滞した思考という湖の畔に一隻の小舟を見つけたのです。(生贄を捧げよう!)こうして私は数十本の湿気たマッチにライターで火を付けマッチの炎を蝋燭に移し、お香に余っていたアメリカンスピリット数本を燃やし、濡れたコピー用紙に水性インクですごく曖昧な魔法陣を一筆書きで描き、ジャックダニエル水割を一息に飲むと気分がすっかり良くなりちびりちびりと水割を舐めていると当初の計画を忘れてしまいました。生贄!そうだ生贄、生☆贄を捧げなくてはいけ■■。危い。生贄は古来から古雑巾と決まっている。揺らぐ蝋燭の灯りの下、古雑巾の縫合を一本一本抜きほどいていくのだ。こうして気の遠くなる過酷で無駄な生贄の儀式は始まった。お酒をちびちび飲みながら。おつまみはなし。それにしても面倒臭え雑巾も臭え。ああ面倒臭えしかも意味が分からねえ。酔いのせい
かつい本音が出てしまう。面倒臭えと思い飲み少しほどいてはまた飲み、30分もしないうちに雑巾の匂いとウィスキーで気持ち悪くなってきた。しかもなんだか悲しくなってきた。濡れた床に寝転がる。目の前に滲んだ魔法陣が落ちている。込み上げて来たが立つ気力もなくそのまま寝ゲロ。就寝。こうして生贄は一命をとりとめた。