2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

椅子の話

動く椅子は動くからいい。動くからすごくいい。便利でもある。動かない椅子は動かないけれどいい。がっちり固定されてない方がいい。ときどき動けと思う。動きまわる椅子もいい。理由もなく動きまわるからいい。便利かっつーとそうでもない。でもない。本来…

片っぽう2

コオロギの死因を解せぬまま私の頭は疑問と焦燥が渦巻き熱っぽくなっておりました。片っぽうだけのビニールスリッパは、勉強机の上にぽつねんと投げ出されたまま所在なくランプの灯りにちらちらと影を投げておりました。一体何がコオロギを死に至らしめたの…

D.M.M.K.(出会い)

夕刻。早々と床についた私は激しい衝撃音により、くわと目蓋を押し上げた。誰かが、ドアを、ノック、している。がばと身を起こしドアーへ駆け寄り、ドアー越しに詰問する。「このような時分に何用だ?」その刹那、不快な衝撃音はぴたと止み、一節間をおいた…

例のパターン

髪が伸びたから切ろうと思ったらビールを飲んで忘れる事にしている。汚れた皿が溜まったらこれもビールを飲んで忘れる事にしている。たいていビールを飲んで忘れている。たっぷり小便が出るのに不安が消えないから人生は嫌になります。

懇談会

プラッチック板にカラー粘土で『懇談会開催』と書き、玄関のドアに紙粘土で張り付けようとすると同時に人が集まって来た。張り付けようとすると同時に、だぜ?張り付けると同時に集まった人々が部屋になだれ込む。張り付けると、同時に、……だぜ?「懇談会を…

セミナー

木板にごつい毛筆で『セミナー開催』と書き、玄関のドアに釘で打ち付けようとハンマーを振り上げると同時に人が集まって来た。振り上げると同時に、だぜ?振り降ろすと同時に集まった人々が部屋になだれ込む。振り、降ろすと同時に、……だぜ?「セミナーを始…

片っぽう

いくらかでも侘しさを繕う糧になればよかれと思い、スリッパ内部でコオロギを飼い始めたのは私が嫁入り前のことでした。大叔父様から頂戴した片っぽうだけのビニールスリッパは履き潰されところどころ繕われ擦り切れ汚れてはいましたが、半世紀を経た今なお…

怪力翁(後)

さらに誰かがつぶやいた。「こいつぁあいんちきに違えねえ!」この一言により反翁派が一斉に口火を切った「そうだ!いんちきだいんちきだ!」「ぜったいずるをしてる!」「ひどいやつだ!」とみんながおきなをののしった。その日の帰り、クラス全員が怪力誇…

怪力翁(前)

怪力翁はポスト・サンタクロースを狙っており、一部地域ではすでにその座を治めている。怪力翁のいる地域にサンタは来ない。これは私が小学生低学年の頃の話だ。12月25日、怪力翁を迎えるに至って用意する物はそこそこ容量のある容器、袋、篭、びく、トレイ…

クッキングメモ

最初にお湯を沸かします。鍋に入れて沸かします。次は煮え湯に季節のお野菜を入れて彩りを良くします。彩りは重要です。人によります。お野菜がどろどろになったらタレを加えます。タレはあらゆるショップで購入できます。「コンビニエンスストアや武器・防…

バナナとコアラの30億年戦争

この惑星にはバナナとコアラしか存在しない。他の生物は死に絶えたかもしくはバナナかコアラに進化した。海はなくほぼ陸地全土をバナナの木が埋め尽くし、敵対するコアラと共生している。バナナもコアラも日々進化している。バナナ(果実)はわずかな知性と屈…

バナナとコアラの20億年戦争

スプーンを使ってバナナを食うと文明人になった気がする。コアラはスプーンを使わない。バナナは儀式の際にスプーンを使うが、ここ数億年儀式は行われていない。バナナには強靱な筋肉とわずかな知性があるが、血も涙もない。コアラには慈悲と権力があるが、…

空中墓標

昔この町にはピラミッドに似た建物があった。最初はピラミッドだったが今は違う。ピラミッドが建造される前はゴミ捨て場だった。不法投棄で回収されないゴミが折り重なってピラミッドの基礎が完成した。気を利かせた誰かがゴミ山のまわりに砂利を敷いて水捌…

ばか犬3

ばか犬は時間を認識している。しかし認識がズレている。どうも時間と速度をごちゃ混ぜに考えているフシがある。馬鹿なりに考え実践しているがズレている。ばか犬は常に動き回って現在にいる。睡眠を認識していないのでもちろん眠らない。ばか犬は休憩すると…

ズールとクルーザー3

過去二回クルーザーを買い逃したズールと再々度リサイクルショップに立ち寄った私およびズールはそこで再び一隻のクルーザーを散逸…「ぬう!」慟哭するズール「ク、クルーザーが、な、ない!」芝居じみて叫ぶ私。しかしズールは托鉢、当たり屋、托鉢兼当たり…

メロン VS ポーニィ

ふつうにできあがっている男の子ならだれでも、どこかへでかけて、かくされている宝ものをほりだしたいというはげしい欲望にかられる時期があるものである。ある日、とつぜん、この欲望がメロンをおそった。「この辺のはずめろ…」地図を片手にきょろきょろ辺…

読んだ男/暖炉

男は手に持った本、コードウェイナー・スミス著『ノーストリリア』を閉じ、ゆっくりとチェアーから身をおこすと、いま読み終えたばかりの文庫本をあかあかと炎もえたつ暖炉へ投げ入れた。図書館から貸りている事などはなから問題ではなかった。そして男は「…

●八月読書追加

●サミュエル・R・ディレイニー/ノヴァ 今月は短篇集が多い。

●八月読書

●ロバート・J・ソウヤー/さよならダイノサウルス●R・A・ラファティ/つぎの岩につづく●シオドア・スタージョン/時間のかかる彫刻●フレドリック・ブラウン/さあ、気ちがいになりなさい●ブライアン・W・オールディス/ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド●シャー…