2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

名文紀行37

●「現在」とは自分のことです。 ● わたしは、あるところで、小説について、なにかをいおうとするなら、「全文」を引用しなければならない、と書きました。 /ひとつの小説は、まさに、全体でひとつの作品であり、それを論じるなら、そのすべてを、相手に示す…

名文紀行36

●俺は風呂に入り、勺子の濡れ濡れおまんこのことを思い、芳しい思い出をシャワーの湯気の中にぽやや〜んと浮かばせていたら自然に右手が伸びて、俺は自分でこすり、果てる。ザ・ハイライト・オブ・マイデイ。 ●福井県西暁町の山中にあるミステリー作家暗病院…

名文紀行38

●「このさんまは一体どこでとれたものだ」 「はい。バルト海で」 「それはいかん。さんまはザクセンに限る」 ●昼間でも光がささないような場所に台所はあって、蛍光灯がついていた。そしてその蛍光灯は寿命がつきており、ジーッと音をたて少しずつ明るくなっ…

名文紀行35

●「色々間違えてきたけれど、更に間違えることくらいしかできることはないみたいだね」 ●これは本質へは決して辿りつけないという話ではないし、一度間違えた者が二度とそれを取り戻せないという話でもない。ただ変転だけが続いていき、同じところへ戻ること…

名文紀行34+

――浅倉久志『ぼくがカンガルーに出会ったころ』より 一九四六年に書かれたドールトン・エドワーズの「キョーシツのオーソード」は、翻訳不可能の、しかも三ページたらずの小品だが、論理的な笑いの極致といえるものではないかと思う。 【文字改革の十ヵ年計…

名文紀行34(追悼)

雨ニモデカケズ 風ニモデカケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマイル ヒヨワナカラダヲモチ 慾ハアルガ 決シテ儲カラズ イツモ絶版ヲオソレテイル 一日ニ原書四頁ヲ スクナカラヌ味噌ヲツケテ訳シ アラユルコトヲ ジブンデハナニモワカラナイノデ ツケヤキバデゴマカシ…

FM

お父さん、恥ずかしさのあまり赤面してしまいました。すると娘がひとこと。 「ファザー真っ赤ー!!」

名文紀行33

――早川書房編集部「日本SF・幼年期の終り ―『世界SF全集』月報より―」より ●定石的に例えばウエルズやクラークやハインラインではなく、ハックスリイとオーウェルを目玉として第一回配本に持ってくる、という意表をついた発想の販売戦略だった。「SFも文学た…

名文紀行32

●挫折の原因として見逃せないのは、元々社版のSFの翻訳の、あまりのお粗末さです。じっさい、ある程度以上の評判になり、二十冊も連続刊行された海外小説シリーズで、およそこれほどの誤訳悪訳珍訳ぞろいの欠陥翻訳を並べたものは、他に類をみなかったといっ…

名文紀行30

●ガネーシャの木彫に、こっそり持ち帰った割り箸を供える。 ●飯を炊こうと思い付いた。この時ほど米を研ぎたいと思った事はない。 ●いかに不完全に見えたとしてもこの女は既にこれで完成体らしい。 ●部屋の中で股ぐらに布団を挟み、何度もゴロゴロと転がって…

名文紀行31

●「修業」と朝ちゃんが言って、私はびっくりしてぶふーと笑う。またつられて笑う朝ちゃんの口からよだれがちろっと落ちて後部座席の真ん中に座る唯士の肩に当たる。「どぅわー」と唯士が言い、朝ちゃんが「あははごめーんべふふ」とさらに笑う。 ●玄関で史也…

灰皿

なにかを呪いたいなにかを呪いたいと思い、目の前にある灰皿を呪った。灰皿はふわっと空中に浮いてなかの灰がこぼれた。ずっとそのままなのでタバコを吸って浮きっぱなしの灰皿に灰を落とした瞬間、同時に灰皿も落下した。 もう死のうもう死のうと思い、ひと…

名文紀行29

●女、取引き、喧嘩、恐喝と彼等の悪徳が追求される題材は限りが無い。それは決して、若気の至りなどと言うものではないのだ。恐ろしく綿密に企まれた巧妙極まりない罠があった。人々はこれに、唯若年と言う曖昧なヴェールをかぶせ見て見ぬふりをするのだ。 …

名文紀行28

●ガバイゾーな二崎。シェチュネ〜。シェチュネ〜よホント。もうこれからどんな顔して学校来ていいんだが判んねーだろなーの二崎。シェチュネ〜。 ●求めるものは、子供だとスリルスリルスリルスリル。大人だと金金金金。 ●じゃああんたが降りなよ、と言って石…

男ノイズ女ノイズ

男ノイズってのは、まあ、なんていうか、ちょいと古い話になるんだが、俺が二十ばかりの頃……これが男ノイズ。 女ノイズってのは、まあ、あーだのこーだのあーだのこーだの、でさでさでさでさ、それで話かわるけど……これが女ノイズ。 どちらも、純ノイズ。 聞…

名文紀行27

●仕事の喜びはポケットに入るくらいだが、その退屈さときたら二トン積みのトラックが必要なくらいだったから。 ●やっぱり買いものは楽しい。資本主義のはかない喜び。 ●それにしても不思議だ。善玉も悪玉も、なぜ金をもつとみんな同じ生活をしたがるんだろう…

名文紀行26

俺の人生を起承転結で言えば、まだ「起」の部分だよ。まったく凄まじい「起」だった。 ――劇団ひとり『陰日向に咲く』より

名文紀行22

●自分の吐いた息を売る珍商売を思いつき、一日で五ドルほど稼いだことがあった。 ●本物の小説家と偽物の小説家を見分けるのは簡単さ。命がけで嘘をつけるかつけないか、これではっきり分かれる。 ●自分の常識では理解できないこと、存在すべきでないものの方…

名文紀行25

●読者が本を選ぶのではない。本が読者を選ぶのだ。 ●ああ。人はどうして、他人も自分と同じ物差しを使っていると決め付けるのだろう。 ●「九時五分、か」 わかりやすく、大きめの独り言を言ってみた。 不自然だった。 ――秦建日子『推理小説』より

名文紀行24

文学賞の心得―― 【一】芥川賞は、目利きじゃない。村上春樹も島田雅彦も高橋源一郎も逃している。 【二】直木賞は、賞を与えるタイミングを間違えている。 【三】文学誌新人賞は、宝くじを買うつもりで読め。 【四】文学賞の選評は、選考委員にキャラ萌えし…

名文紀行23

「友達?手に怪我しとる。魔が差すぞ」 ――あせごのまん『余は如何にして服部ヒロシとなりしか』より

境界線の話

Q:あなたは秋葉原へ行ったことがありますか? オタクこと「ヲタ」とは「ウォーター」から転じて「水のごとく必要とされるもの」が語源だと俺は解釈しているが、たぶん違う。山手線の駅名を全部言えても鉄道オタクではないが日本の駅名を全部言えれば鉄道オタ…

名文紀行21

●真白な壁にけさの新聞をこすりつければ簡単に君の肖像が描ける。かすれたインクの染み……これが君の全てだ。 ●面白半分……こいつは悪魔だ。 ●美しい日本のゾンビたちの礼儀正しい社交が日本文化ってやつなのかも知れない。 ――君は何に対してハンストをしてい…

米国猿蟹

お猿のジョージとロブスターのフレッドがいました。ジョージはおもむろにフレッドを殴りつけました。フレッドの殻は割れてしまいました。「な、なにをするんだいジョージ」しかしジョージはそれに答えず、二発三発とフレッドを殴り続け、ついには殺してしま…

名文紀行20

●学術論文にもポルノ映画のようなストーリーはある。詰まるところ、ダーウィンの『種の起源』も様々な例証を時に強引に結びつけなければ、収拾がつかなかったのだ。小さな変異が積もり積もって、動物は変わり、最終的に人間になったといいたいためにストーリ…

名文紀行19

●五年間を過した町について、一つだけコメントしておこう。 消えちまえ! ●「新しいエロ本くれよ、オナニーって本当に楽しいな」といいながら僕の肩に腕をまわすのだった。僕は思わずその腕を払いのけたくなった。もはや普通のオナニストになった梓は魅力の…

名文紀行18

●昔、オランダの小さな町で、父親が豚を殺すところをその子供たちが見ていて、やがて父親が出かけると早速豚殺しを真似することになりました。兄は弟に、「お前、豚になれ」と言って弟の咽喉をナイフで切り裂きました。悲鳴を聞きつけて母親が飛び出してきま…

名文紀行17

●「オッサン……」 「私を侮るな」 「オッサン、すごい」 「侮るなと言っただろう!」 「ああオッサンすごいのよ」 「……まだなにもしていない」 「このままでいいの。オッサン、すごい」 「ふざけるな」 ●「たぶん、俺の家系って、先祖代々、貧乏籤を引く宿命…