缶詰

友人に缶詰を開封せずに中身を食べるという奴がいる。ならやってみろ、というわけで快晴の公園にて『缶詰あけずに食う』実験が行われた。時刻は午前10時。その友人の前に三つの開封してない缶詰が並べられる。順に『シーチキン』『コーン』『茹であずき』。「では、さっそく始めてもらおう」すると友人「もう、やったぜ?」「なに!?」私は素早くのひとつを缶詰を手に取る。「か、軽い!」缶詰は封をされたまま、開けられた痕跡はない。他のふたつもやはり、軽い。念のため缶切りで開封すると、やはり中身は空。私は慄然とした。もう一度言おう。私は慄然とした!すると友人、私の心中を見抜いたかのように「どうやら、慄然としているようだな」その言葉に、私は再び慄然とした。なんという慄然!すると友人「ふふふ。慄然としているところ邪魔かもしれんが、どうやったか教えてやろうか?」私「いや、別にいい」この時の私は、胸の内に広がる純然たる慄然にのみ陶酔しきっていたのだ。嗚呼なんという甘美なる慄然!缶詰の謎は謎のままだが、あの時の慄然
には、今でも思い返す度にぞくぞくと慄然する。