『霊が見えるようになる講座(初級)』を受講し、霊が見えるようになった。駅から徒歩2分ぐらいの場所にあるパン屋の正面に霊が立っている。パン屋の正面といっても入口の前ではなく入口から3メートルぐらい離れた道路の真ん中に立っている。私の《霊体視力》が低いせいかぼやっとしていて男だか女だかわからないがとにかくいる。それで霊はじっとパン屋を見つめている。開店から閉店まで見ている。店の明かりが消えると同時に霊も消える。最初は驚いたがもう慣れた。道路の真ん中に立ってるから車が通過したりするが霊はまったく気にしない。何が通過しようが気にしない。ただパン屋を見つめて毎日おなじ場所に立っている。パン屋が休みの日は霊もいない。最近はこの霊に会釈するようにしている。これは専門用語で《見えてんぞアピール》という。だが霊は会釈を返さない。『霊が見えるようになる講座』の講師に尋ねてみたところ、会釈を返されるには霊の話を聞いて交流を深めなければならない、との返事。だが霊の話を聞くには『霊の話が聞こえるように
なる講座(中級)』を受講しなければならない。それは面倒っちいし金もかかるので知り合いの高松さんといっしょにパン屋の前に行き、代りに話を聞いてもらった。高松さんは霊の話を聞けるが霊を見れない。霊の話を聞きおわった高松さんは、店のパンを買ってきてくれと言う。私は言われた通りパン屋へ入って短めのフランスパンみてえやつと丸くて堅ぇパンを買った。計470円。そのパンを袋から取り出すと霊の表情が一変する。物欲しげな顔。「ちぎって投げてあげて」と高松さん。言われた通りにすると霊がパン(丸くて堅ってぇやつ)の欠片を口でキャッチ。そんで食う。高松さんからは空中でパンの欠片が消えたように見えるらしい。「堅ってぇけどうめぇ、堅ってぇこのパンうめぇ好き」と霊のコメントを通訳する高松さん。その後もパンをちぎっては投げちぎっては投げしていたが途中から面倒臭くなって結局ぜんぶ置いて帰った。その経緯を講師に話すと「それは《パンばっか食う霊》です」と言われ、完全に納得した。翌日から霊は私の会釈に会
釈を返すようになったが、3日もするとまた会釈を返さなくなった。だから私も会釈しなくなった。きっとまたパンを与えれば会釈を返すようになるんだろうがもうあげない。