名文機構15

「女っていうのは、普通のサイズのケーキ、つまり切り分けた一切れを食べるんじなくて、もっと小さいのを食べるんだ。すごく薄く切ってな。おれの調査によると、角度にして二十度ってところだ。(中略)そのくらい小さな一切れだったら、食べたことにならないって考えるんだな。それっぽっちなら、車の中でなめるキャンディーと同じで、カロリーの網の目をすり抜けてしまうだろうって。そしてしばらくすると、次の一切れを食べる。もちろんこれも二十度以下で、やっぱり食べたことにならない」
「いったい何の話なんだ」
「女とケーキを食う機会があったら、よく見ててみろ。おれの言うとおりだから。そこで考えたのさ――新しいダイエット法だ。ただ食べ物を少しずつ、何回も買うだけでいい。食べたいものは何だって食べられる。一回に二十度以上の角度を食べないようにしさえすれば。どう思う?」
「完全無欠のナンセンスだ」

マイケル・マーシャル・スミス(訳)嶋田洋一『スペアーズ』より