カタログを見た

紫色のナイロン製で有刺鉄線をぐるぐる巻きにしてある入れ口のない完全密閉された僕の郵便ポストに暮藤通信販売会社のカタログを入れた奴は誰だ!入れ方を知りたい!取出し方は知っている。無傷でだ!  カタログというのは見飽きないものだ。子供の頃からカタログだけは捨てずに部屋の一角に累々と積み上げられているが、全て手垢と石炭で黒ずんでいる。手垢は僕のものではない。カタログを見るときは手袋をするからだ。その手袋は石炭でまっ黒だ。 最新のカタログに目を通す。テーブルが二万五千円飲料水1ダースが二千円テーブルが二万五千円飲料水1ダースが二千円。先月号と全く同じ品が全く同じ値段で印刷してある。テーブルは何年か前からずっと同じ値段だが飲料水は二百円値上げした。どちらも欲しくないし今後も買う予定はない。