ゴリラ

部屋にゴリラがいたので叩き潰す前に話しかけた。「何色が好き?」「ウホ」「野球のルールは分かるかい?」「ウホ」初対面の相手に失礼な事を聞いてしまった。意思の疎通は適わなかったがコミュニケーションは成立する様だ。「外国に行った事はあるかい?」「ウホ」「僕はあるよ」嘘をついてしまった。ばれただろうか?ゴリラの表情からは伺い知る事はできない。「ウホ」ゴリラはおもむろに冷蔵庫を開くと中の食品を手当たりしだい食べ始めた。「おいおい、僕の食品だぜ?」ゴリラは豆腐を食べている。「足をくずせよ」ゴリラは正座して牛乳を飲んでいる。ゴリラの手足は太く凄まじい獣臭がする。「なあ」ゴリラは冷凍庫にも手を伸ばし冷凍ハムを食べ始めた。「ハムだけは勘弁してくれ!」「ウホ」ゴリラは冷凍ハムに苦戦している。「僕はサソリを食った事があるんだぜ」初対面の相手に自慢話をしてしまった。信じてもらえただろうか?「ウホ」その声で僕は恐怖した。相手は見知らぬゴリラだと今になって思い至ったのだ。しかも初対面だ。顔見知りのゴリラであっても
怖いのに初対面なのだからなおさら怖い。気付いた時には既にゴリラを叩き潰していた。ぺしゃんこになったゴリラをハンガーに掛けて吊す。ハンガーは毒を中和する。