巨大蝉

毎年夏になると巨大蝉の鳴き声で家がビリビリ揺れる。耳にモルタルを詰めても脳が揺れる。完全害虫なので殺すと懸賞金が貰えるが殺すのも命懸けなのでハンター以外はたいてい蝉を黙殺する。ハンターは重防音服に身を包んで忍び寄り近距離から散弾銃をぶっ放つ。ハンター以外は蝉の好む毒樹液を木に塗るが毒樹液はあらゆる植物を枯らすため使用には資格が要る。防御策なしに巨大蝉の半径五百メートル圏内に近づくと音波振動で血液が沸騰して死ぬ。この季節はミイラ化した犬猫の死骸が町のあちこちに身請けられる。私の住む地域では巨大蝉が脱皮した際の脱け殻に挽肉、筍、椎茸、海老、銀杏等を詰め素揚げにした脱け殻詰めが冠婚葬祭クリスマスの席でふるまわれる。挽肉と椎茸と海老と銀杏が脱け殻毒を中和する。筍はお好みで。