読んだ男/暖炉

男は手に持った本、コードウェイナー・スミス著『ノーストリリア』を閉じ、ゆっくりとチェアーから身をおこすと、いま読み終えたばかりの文庫本をあかあかと炎もえたつ暖炉へ投げ入れた。図書館から貸りている事などはなから問題ではなかった。そして男は「ママ・ヒットンのかわゆいキットン…」と呟いたが、コードウェイナー・スミスの他の本を読んでいないため、意味は解していなかった。それから男はキリン・スパークリングホップをちびちびと飲み干した。つまみは漬物とタバコだった。しばし朝のニュースを見、男はおもむろにチェアーから立ち上がったとみるや、洗面所へかけ込み歯を磨き、うがいし、軽くむせた後、消灯した。遮光カーテンの隙間からから朝の陽射しが洩れていたが気にせず床につき、ちょっともぞもぞやってから、寝た。