暖炉4

「遅れた…」そう呟くと男は、チェアーから身を起こし、アルフレッド・ベスター著『願い星、叶い星』を暖炉に放った。タイトルは違えども、この本の表題作は早川書房SFマガジン・ベスト〉『冷たい方程式』収録「祈り」と同一である。男はそれに気付かず、読んでる途中「あれ?デジャヴか?」と思っていた。以上蛇足。男は、毎月読み終えた本を暖炉に投げ込んでいるが、これは男の主観でしかなかった。実際には、メタルラックに置いている。だが男は、暖炉の存在を認め、事実その熱を感じていた。それが、メタルラックだとはつゆ知らず…。話はそれるが、暖炉付きのアパートがあったら、ちょっといいよね。