あたまのくるった駐在さん

およそ説明の必要はないと思うが、なかには必要とする人がいないとも限らないので、説明する。あたまのくるった駐在さんは、あたまがくるっていた。つまり、駐在さんの頭は狂っている、という事だ。そんな駐在さんは今、自分が交番だと思っている建物の、入り口前に置かれた普段は傘立てとして使っているビールケースに座って尻の痛みに耐えながら(ビールケースが正位置のため)、電源と電池の入っていないセレクト以外のボタンが全てむしり取られたゲームボーイの割れた液晶を見つめながら、いつセレクトボタンをむしるべきかと考えあぐねていた。その瞬間を思うとドキドキしてしまうが、むしり取った後の喪失感を思うと簡単に結論を下せる問題ではなかった。すると駐在さん、二の腕に巻いたほつれたミサンガにちらと一瞥をくれ「時間だ」と発すると、すくと立ち上がり傍らの地面に刺さった目印の棒っきれを引き抜き、その場所を素手で掘りはじめます。20センチも掘り進めますと何やら堅いものにぶつかりました。駐在さん、思わずにやり。この瞬間
が、たまらないのです。さて駐在さんが自分で埋めて掘りあてた物体はスコップなのです。駐在さんはこれを理にかなった行動だと思って、再度にやり。そして穴を埋めます。そこに目印の棒を立てます。これで次回もちゃんとスコップを掘り出せますよ!そこで駐在さんにはたとひとつのすばらしいアイデアを思い浮かびました。「他に棒をたてよう」有言実行といわんばかりに落ちている棒を拾うと、ここだと思う地面に棒をぐさと突き立てました。なんとダミー棒です!ダミー棒があれば次の機会には二者択一の楽しみが増えます。はやく、やりたい!そこで駐在さん、居ても立ってもいられなくなりダミー棒を引き抜くと、そこを掘り始めました。ここに、スコップが、埋まっているかも、しれない!しかし掘れども掘れどもスコップは見つかりません。駐在さん、泣きそうなお顔。いくら掘っても出てきませんよ!ダミー、なんですから。