入学式

その年のその日は狂ったように桜が咲いていた。今でも私はその日の出来事を狂ったように思い出す。
私は狂ったように胸を高鳴らせ、狂ったように校門をくぐり体育館で狂ったような校長の狂ったような話を聞き、教室にて着席した。まるで狂ったようにクラスは黙りこくって狂ったように担任教師が入室した。教師は黒板に狂ったような文字で狂ったように自分の狂ったような名前を書き、狂ったように「みんなに転入生を紹介する」と言った。そのとき私は「じゃあいっしょに入学でいいじゃねえか」と狂ったように考えたが、そこへ転入生が狂ったように扉を開けなだれ込んで来た。転入生(実質同期)は狂ったように自己紹介を済ませ黒板に狂ったように名前を書いて席に着いた。「ではみんなにも自己紹介してもらう」と狂ったように教師が言うと、クラス全員が狂ったように立ち上がり、まるで狂ったように一斉同時に自己紹介を始めた(転入生も)。全員が狂ったよう自己紹介を終わり狂ったように着席すると次の瞬間、女子は全員狂ったように泣きだし男子は全員狂ったように暴れだした。号泣と怒号に満ちた教室はあたかも狂ったかのようだった。すると教
師(新任)「やめろやめろやめろ!これじゃ学級崩壊だ!」と言いだすや狂ったように泣き暴れ、少しすると疲れてすやすや眠ってしまった。それが完全暴徒たるクラスに伝染すると、クラス一同も狂ったようにすやすや眠ってしまった。
それから三週間、眠りに眠って眠り倒し、春眠暁覚えてやがれ糞くらえ親の仇と言わんばかりにゴールデンウィーク明けまでクラス一同眠りに眠って眠りまくり梅雨に突入し梅雨も明け、七月中旬になったあたりで一人二人と目を覚まし連鎖してようやく全員起床したが、それでも桜は狂ったように満開だった。 転入生は四月いっぱいで転校していた。目を覚まして最初に目にしたのは黒板に書いてある先生と転入生の名前だった。
顔は忘れちゃったけど、今は何してんだろうなあ池田君。