莫大な質量

甘味ショップでシュークリームを15個まとめ買いして店を出、包みを開いて中身を確認すると私は憤然として甘味ショップへ引き返した。私「責任者を出せ!」責任者「私です」「ここで買ったシュー(クリーム)はことごとく爆裂しているじゃありませんか!こんなぐしゃぐしゃったらないよ!」「外圧の変化に伴って爆裂したものと思われます。しかし味に変化はありません」「そうと言われましても私ぁ引き下がるつもりゃありませんよ!なんだって外圧の変化で爆裂するんだい!えぇ?どういった料簡だい?」「当店のわずか直径10センチのシューには一個あたり風呂桶一杯分のクリームが内包されております。莫大な質量!したがって当店より外へ出されますと一時に圧縮クリームが加速的膨張し、御覧の通り爆裂します」「なるほど。どうりでこのショップに来ると耳がおかしくなるわけだ。だがもうひとつ疑問がある。私の買った15個のシューのうち9つは爆裂したが残る6つは元の形体を変えることなく健在だ。なぜかね?」「その難解なる堅き疑問
、すぐさま溶解させて見せましょうぞ。当店のシューは全て同じ製法により作られております。したがって爆裂する場合すべてが爆裂せねばおかしい、と考えるのが一般的ですが実際には爆裂する割合も緻密に計算して作られているのです…」「ちょっと待て。爆裂する事を事前に知りおきながら販売しているのか?」「いえ、緻密な計算により一定確率の割合でいくつかの条件の元により爆裂するというカラクリです。微生物の活動状況、気温、湿度、微量の電圧、運…そういった様々な条件下によって爆裂する…と当店では仮定しております」「なるほど。腑に落ちない部分が多いがそっちがそう仮定するなら仕様がない。…では、おつかれ様でした」「はぁい!お疲れぇ!また明日もよろしくぅ!」という店長の挨拶を背に、私は次の〈ショップ〉へと足を早めた。