ひでんのわざ

わりと道幅のある商店街を自転車で走っていたら、俺の10メートルぐらい前を自転車に乗った小学一年ぐらいの男子集団が走っている。小学生集団は立ちこぎで全力疾走し何やら叫びながら会話している。俺は普通の速度で自転車をこいでいるのだが小学生からしてみれば早いわけで、謀らずとも爆走小学生集団を追う形になってしまう。小学生が立ちこぎをやめて少しでもスピードを落とすと追い抜くことになる。いわば未必のチャリ・チェイスである。そこで最後尾を走るひとりの小学生が疲れからか、立ちこぎをやめた。みるみる縮まる車間距離。その小学生との距離が2メートルぐらいになったところで気配を感じたのか、その小学生が俺の方を振り向いてボソっとひと言。
「ひでんのわざか…」
どうやら俺は自覚もないまま《秘伝の技》を身につけていたらしい。