怪奇!!二重古書店の赤い罠!!

立地条件の悪さも手伝ってか、距離は遠くないがほとんど行かない店、というのがある。先日、私はそんな古本屋へ行った。過去、この店へは数回足をはこんだが、商品を買ったことは一度もない。先日その店を訪れた際、私は偉大なる秘密を垣間見たのだ!
そもそもこの店は、古本屋にあるまじき日当たりのいい場所に建っていて致命的なのだが、客もほとんど見かけず経営は大丈夫かと心配になる。そんな店内に入ると、客はゼロ。店奥におっさんがひとり。いらっしゃいの声はなし。小さく流れるAMラジオ。好感がもてる。店内ざっと見回し、おなじみ「外人さん文庫コーナー」の前で立ち止まり物色する私。それにしてもアガサ・クリスティーの本がやたらと多い。だがSFはほとんどなし。ちょっと気になった本を棚から取ろうとしたが、ぎちぎちに詰まっておりなかなか取り出せない。ようやく取り出し、ぱらぱらめくって再び棚へ戻そうとすると、ぎちぎちに詰まっていたので隙がなく戻せない。それでも苦労し元の場所に本を押し込んでいると空いたスペースの奥に、何か見える。はて、と思い数冊まとめて引き抜くと、その後ろにも本が並んでいる!無駄に厚みのある棚ではなかったのだ!なんと本棚が二重になっているのだ!本棚が二重になっているのだ!怪奇・二重本棚!なんというカラクリ!こっ、こりゃあ道理だぜ…
生唾をのむ私。もしやこれはレア本万引き防止対策の一環なのか!?裏棚は稀少本の巣窟やも知れぬ!私ははやる気持ちを抑え、五六冊まとめては引き抜き、裏棚をチェックしては戻すという作業を続けた。そしてずらーっと並んだアガサ・クリスティー(背表紙・赤)の裏棚を見、私は慄然とした!裏棚にもクリスティーがずらっと並んでいる!!うっ!うしろもクリスティー!!うしろもクリスティー!!
そして何もかわなかった。