九月読書(2)

夜は千の目を持つ(1945)
ウィリアム・アイリッシュ(訳)村上博基/創元推理文庫M 410ページ
星のふる晩、青年刑事ショーンは、川に身を投げようとしている娘を救った。彼女の父が、今まで正確無比な予言をしてきた謎の人物に「獅子による死」を告げられたというのだ。実業家で財産家の父は恐怖におののき、時計の針を見つめながらただ待っている。これは犯罪計画か? 獅子とは? 予言者の正体を追い、警察の捜査が開始された。アイリッシュの真骨頂を示す不朽の名作。
■マッカンドルー航宙記(1978〜1983)
チャールズ・シェフィールド(訳)酒井昭伸/創元SF文庫 371ページ
日々、マイクロブラックホールとたわむれる変人科学者、マッカンドルー博士。奇矯な性分で知られるこの男こそは、太陽系でも最高の頭脳をもつ天才物理学者であった。やがて彼自身が開発した画期的な航行システムの宇宙船を駆り、相棒の女船長ジーニーと共に大宇宙に乗りだすが……二人を待ち受ける驚異の事件の数々! 科学者である著者がその才能を遺憾なく発揮した傑作ハードSF。
フラニーとゾーイー(1961,1955,1957)
J・D・サリンジャー(訳)野崎孝/新潮文庫 238ページ
アメリカ東部の小さな大学町、エゴとスノッブのはびこる周囲の状況に耐えきれず、病的なまでに鋭敏になっているフラニー。傷心の彼女に理解を示しつつも、生きる喜びと人間的なつながりを回復させようと、さまざまな説得を試みる兄ゾーイー。しゃれた会話の中に心の微妙なふるえを的確に写しとって、青春の懊悩と焦燥をあざやかにえぐり出し、若者の感受性を代弁する連作二編。