九月読書(3)

◆火星人の方法(1955,1952,1954)
アイザック・アシモフ(訳)小尾芙佐浅倉久志/ハヤカワ文庫SF 308ページ
火星はようやく、ほとんど自給自足できるようになったが、水と食料の一部は地球に頼らざるをえない。とくに水だけはどうにもならない。ところが地球は大量の水を持っているにもかかわらず、その供給を制限するというのだ。そこで、火星の人々がとった火星ならではの方法とは……? 表題作のほか、植民団全員が病死した謎の惑星ジュニアの秘密を探ろうとする科学者と少年の活躍を描く「まぬけの餌」などを収録する傑作集。
◆停滞空間(1959,1956〜1958)
アイザック・アシモフ(訳)伊藤典夫・他/ハヤカワ文庫SF 377ページ
時力線と平行に動き、エネルギーの過不足のない場<停滞空間>。この別の宇宙を通りぬけて、四万年前からネアンデルタール人の子供ティミーは連れてこられた。みにくい猿人の少年に全世界が好奇と嫌悪の目を向けるなか、世話係のミス・フェローズだけは、深い愛情をもってティミーに接するのだが……表題作をはじめ、万能コンピュータの不可解な行動を描いた「世界のあらゆる悩み」など、巨匠が著した九つの未来の物語。
■太陽レンズの彼方へ(1992,1993,1999,2000)
チャールズ・シェフィールド(訳)酒井昭伸/創元SF文庫 350ページ
太陽系随一の頭脳の持ち主にして極めつきの変人、マッカンドルー博士。新たな法則、新たな発見を求め、自ら開発した画期的な航行システムの宇宙船に乗り、相棒の女船長ジーニーと共に、大宇宙を所狭しと飛び回る! 巧妙に仕掛けられた罠をいかに打ち破るか、「影のダークマター」「新たなる保存則」ほか2編を収録。科学者シェフィールドの知識満載、本格ハードSFの決定版。
◆物語が、始まる(1996)
川上弘美/中公文庫 217ページ
いつもの暮らしのそこここに、ひっそり開いた異世界への扉――公園の砂場で拾った<雛型>との不思議なラブ・ストーリーを描く表題作ほか、奇妙で、ユーモラスで、どこか哀しい、四つの幻想譚。芥川賞作家の初めての短篇集。
■神様(1998)
川上弘美/中公文庫 203ページ
くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである――四季おりおりに現れる、不思議な<生き物>たちとのふれあいと別れ。心がぽかぽかとあたたまり、なぜだか少し泣けてくる、うららかでせつない九つの物語。デビュー作「神様」収録。ドゥマゴ文学賞紫式部文学賞受賞。 解説・佐野洋子
無伴奏ソナタ(1977〜1981)
オースン・スコット・カード(訳)野口幸夫・他/ハヤカワ文庫SF 410ページ
生後六ヵ月にして音とリズムに対する天分を認められ、二歳にして音楽テストで“神童”と評されたクリスチャン。かれは森の奥深くで人工的な音、他人の音楽を禁じられて育てられた。聴くことを許されたのは鳥の歌、風の歌、雷鳴など自然の奏でる音楽だけだったが……禁じられた音楽を聴いてしまった天才音楽家の運命の変転を描く表題作、無重力戦闘室で命がけの戦闘ゲームを展開する11歳の指揮官を迫力ある筆致で描く処女作「エンダーのゲーム」など、ファンタジイからハードコアSFまで、独創的なアイディアと奔放華麗な想像力で、あらゆる読者を魅了する傑作11篇を収録!