九月読書(4)

◆TAP(1986〜1995)
グレッグ・イーガン(編・訳)山岸真/河出書房新社 368ページ
日本オリジナル第四短篇集(全作本邦初訳)
ファウンデーション(1951)
アイザック・アシモフ(訳)岡部宏之/ハヤカワ文庫SF 355ページ
第一銀河帝国は、何世紀にもわたってすこしずつ頽廃と崩壊をつづけていた。だが、その事実を理解している人間は、帝国の生んだ最後の天才科学者ハリ・セルダンだけだった! 彼は自ら完成させた心理歴史学を用いて、帝国の滅亡と、その後につづく三万年の暗黒時代を予言したのだ。この暗黒時代をただの千年に短縮するため、セルダンはふたつの“ファウンデーション”を設立したのだが……壮大なスケールで描く宇宙叙事詩
■奇術師(1995)
クリストファー・プリースト(訳)古沢嘉通/ハヤカワ文庫FT 587ページ
イングランドに赴いたジャーナリストのアンドルーは、彼を呼び寄せた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。お互いの祖先は“瞬間移動”を得意演目としていた、二十世紀初頭の天才奇術師で、生涯ライバル関係にあった二人の確執は子孫のアンドルーにまで影響を与えているという。二人の奇術師が遺した手記によって、衝撃の事実が明らかとなる! 世界幻想文学大賞を受賞した幻想巨篇。(映画化名「プレステージ」)
■双生児(2002)
クリストファー・プリースト(訳)古沢嘉通/早川書房 510ページ
歴史の流れに翻弄される二人の男の人生を、虚実入り乱れた“語り=騙り”で描く大作
1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチル回顧録のなかで記されている疑義――英国空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)――に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。ソウヤーの回顧録を提供した女性アンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)は、自分の父親は第二次大戦中、爆撃機操縦士を務めていたと言う。果たして彼女の父親はほんとうにグラットンの探しているソウヤーなのだろうか?
作家の棲む現実から幕を開けた物語は、ジャックとジョーという同じイニシャル(J)をもった二人の男を語り手に、分岐したそれぞれの歴史の迷宮をひたすら彷徨していく……。
稀代の物語の魔術師プリーストが、SF、ミステリにおける技巧を縦横無尽に駆使して書き上げた“もっとも完成された小説”。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞受賞作。