本年度最高傑作(初出2/11)

▽なんもねーところから生まれ姫
「お前も今年で16歳。よってうちあけるが、お前はなんもねーところから生まれた」
「父上!いったいどういうことです!」
「知らん!お前はなんもねーところから生まれた。なんもねーところからだ。なんもねー、ほんとなんもねーところから生まれた。生まれたというより出現した。なんもねー、ほんとなんもねーところから」
「そんな父上!なんもねーところからだなんて統計学的にありえませぬ!」
「知らん。とにかくなんもねーところから生まれた。生まれたというより出現した。唐突に。空中からぽっかりと出現した。音もなく。なんもねー空中から、だ。統計学も知らん」
「音もなく!そんな父上!統計学は素晴らしい学問です!なんもねー空中からだなんて!では母上はどうなったのです!我が幼少の時に亡くなったと聞く母上は!」
「知らん。ほんと知らん。最初からいなかった。最初からいない。なんもねー空中にから生まれた。車庫の」
姫「たはっ!車庫!車庫か!そりゃあいいや!それで納得がいく!統計学的にも稀有な例ではあるがゼロではない!非常に稀だがゼロではない!」
父上「知らん。実際なんもねーところから生まれた。ぽっかりと。それでも俺ぁおまえを実の娘として育てた。男手ひとつで到らねぇところも多々あったろうし辛く当たった時もあった。苦労もさせたし寂しいおもいもさせたと思う、だが俺ぁ、俺ぁそんな、そんなおめぇを……」
姫「もういいわ父上(クスン)。確かに統計学的に苦労も寂しい思いもしたわ、けれど、けれど……」
話は途中だがもうアイデアがなんもねーうえ、統計学的に見てもだいたいいつもこんぐらいで終わるから、終わる。
[原題:すばらしき統計学]