2010-04-01 名文紀行17 ●「オッサン……」 「私を侮るな」 「オッサン、すごい」 「侮るなと言っただろう!」 「ああオッサンすごいのよ」 「……まだなにもしていない」 「このままでいいの。オッサン、すごい」 「ふざけるな」 ●「たぶん、俺の家系って、先祖代々、貧乏籤を引く宿命なんだよ」 「そうかもしれない」 「断言されちゃった」 「そうかもしれないよ。でも、自分でそれを言ってはいけないよ」 「なぜ?」 「喋ったことは、やがて実現する。考え続ければ、その通りになる。人のせいにするな」 ――花村萬月『皆月』より