名文機構2

「誰しもいうことだが、初めてシュウ・クリームを喰った時の驚異というものは、震天動地的なものである。こんなウマイものが世の中にあるかと思う。羊羹、最中、饅頭のたぐいは、弊履の如く、蹴飛ばしたくなる」
これは獅子文六氏が十歳まで居住していた横浜の追憶談で、おそらく明治中期のことであろう。

山田風太郎『風眼抄』より