名文機構12

自分のペニスを吸おうとする。試したことがある人なら知ってるだろう、自分のモノを吸うのはたいへんなことだ。背骨や首の骨や、筋肉、とにかく体全体にかなりの負担がかかる。こすりながら、口に届くように目一杯長く伸ばしていると、まるで拷問台の生き物みたいに倍の長さになる。両脚は頭の上で二手に分かれてベッドの横棒にからみつく。肛門は霜の中で死にかかった雀のようにひきつる。大きく張り出したビール腹のところで体が二つ折りになる。筋肉を包む皮はビリッといきそうだ。そして何が悔しいって、ここまでしても、五、六十センチ届かないというのではなく、舌の先がペニスの頭にいまにも触れそうなところまでいくにはいくが、あと三センチ届かないことだ。これは永劫の距離である。または六十キロの。神は……神じゃなくてもいいが、ちゃんとわかっててわれわれの体を創ったのだ。

チャールズ・ブコウスキー(訳)青野聰『ありきたりの狂気の物語』より