爆裂地蔵(後)

2ndシーズンの地蔵の素材は人や獣の糞便であった。しかしバカが破壊するまでもなく雨により溶け、近隣住民は地蔵、石工、バカを無いものとして扱った。しかし一人だけ地蔵に毎日参拝する婆がいた。婆もまたエリートに属する気違いだった。毎日一度と言わず数回地蔵に手を合わせ、地蔵を食べ感想を述べ時には自作の詩を朗読しお供え物をして帰った。お供え物は決まって食いかけの食パンもしくは茹でてないうどんだった。それでも2ndシーズンは13代続いた。石工が『うんこは溶けちゃう』事に気付くのは雨の日にたまたま現場に居合わせた事による。よって3rdシーズンは木材によって製作されたがバカに放火されたりでわずか5代と短命に終わり、その後大理石、金属、看板、イラスト、思想、グラフ、本人とシーズンを重ねたがことごとくバカに妨害破壊された。バカは社会人になってもバカだった。いつしか地蔵製作→破壊がお互いのエリートとしての誇りであり対話になっていった。二人は道でばったり顔を合わせても会釈を交わすだけであり、
お互い歩み寄りはしなかった。そんな二人について参拝婆は食パンを噛ながら私にこう語ってくれた「ホント二人共最高にクソッタレな大馬鹿の地蔵狂さ。だけどあたしゃあの二人が大好きなんだ。あいつらはいつだって真剣で誠実でクレイジーさ。死ぬ価値もないし地獄へ行く価値もない」私はその言葉を文字通り以上に受け取った。そして自分でも気付かぬうちに涙していた。私も少しだけ立派になった気がした。婆の去った後にはみみのみとなった唾液まみれの食パンが残されていた。全裸で直立した石工本人扮する地蔵の前に。