欲情装置(前)

かれこれ40年程遡った話になりますが、とある午前、私が何するでなく縁側に座り庭を眺めておりますと見慣れぬ切り株が眼中に飛び込んできたのであります。(はて、あんな所に切り株はもとより木などあっただろうか?)私は小走りにそれに近寄り見ますと、切り口にはだいぶ年季の入ったずいぶん古い物と伺い知れるのでした。切り株は直径五尺程もある見事なもので我が庭にぽつねんと座しているのであります。私はふと座ってみたいような心持ちになり、ちょこねんと切り株に腰を降ろしたのであります。するとどうした事でありましょう!私はなんとも形容しがたい心理状態に陥ったのであります。すなわちむらむらとした沸き上がるような淫熱が私の臀部から背筋へと徐々に押し寄せ私は肉欲の虜となっていたのであります!気付くと私の肉竿はみるみると硬化してゆき、しまいには天を仰ぐが如くに直立したのであります!数年前には医師すらも匙を投げた私のインポテンツがたちどころに鋼の剛直となったのであります!私は喜び勇み数年ぶりの自慰行為に耽溺
し、時の経つ事も忘れ三度四度と行為に浸ったのであります。途中、小雨が降り地を湿らせましたが私は一向に気にせず、あまりにもの情欲に肉悦を貪ったのであります。しかしそんな私の姿を柵の外より見入っていた者が居たのであります。その者は、その時分私は中学にて教鞭を執っておったのでありますが、なんと教え子の女生徒だったのであります!後にそれが南石伏中学虐殺事件の端を発する事になるのですが、自慰行為に夢現つとなっていた私には知る由もあろうはずはありません。続