集会

高校の時メロンというあだ名の奴がいた。毎日弁当の代りに半分に切ったメロンを持ってきてうまそうに食う。種も飲み込み皮は持ち帰って調理して食うらしい「メロンには捨てる部分がないんだ」とはりきって言うメロンに、偉そうな事言うなと思った。そんなメロンから数年ぶりに電話がかかってきた。年に一度の集会に代理として出席してくれと言う。仕事の都合で出れないとかなんとか。断りたかったが押し切られて行く事になった。   当日。会場はホテルの広間で参加者は200人もいる。広間に入るとメロンの香り、正確にはメロン芳香剤の甘ったる〜い香りがする。この会場にいる人間は三食メロンしか食わないという立派な人が集まっているらしい。社会人も学生も老人もいるが皆にこにこしている俺は帰りたい。飲み物はメロン味のジュースやリキュールだし食べ物はメロンのみ。ここの会員はメロン以外を口にすると罰としてメロン汁を血管に注入されるらしい。怖い。ゲップでもしたら昼飯のカレーがばれないだろうか。会場の人達はやはり立派であって一
流であって服装からアクセサリーから髪型もメロン風だし背中にでっかいメロンと鷲の入れ墨をしてる人は参加者から羨望の眼差しで見られていた。会長の挨拶や会の近況、会歌が唄われるとすぐ立食パーティーになったが私は喫煙室でメロンリキュール片手にタバコを吸って時間を潰した。喫煙室で二十歳前後の会員に「いつから会員ですか」と尋ねてみると「まだ半年っすね〜学生金ないからキツいっすよ大学留年したんすよね〜」とべらべら喋った後、メロンは年に一二度しか食べない事、自分で金を出して食った事は一度もないという話を聞いた。途中から会話に参加したおじさんも似たような事を話し、娘は妻の悪い所だけ受け継いだだのと言っている所へ呼び出しの放送があり会場へ戻った。会場はどよめいていた。ステージ中央に30センチ程の真っ黒な丸い球があり一同それん見つめている。すると「これは世界でも非常に珍しいメロンで幾度もの交配、品種改良の結果…」とくだくだしい説明の後、小さく切り分けられた中は赤い黒皮メロンが全員に配られ、皆でいっせいに
食べた。味はスイカだった。これがハイライトだったらしく泥酔した会長が「メロンにめろめろー!」と挨拶して皆口元だけ笑った。帰りに会員限定のロゴ入り小鉢セットと記念会報を受付で貰い、帰った。