機械動物愛護団体

登鎧原公園には野良電気犬がうようよいるが市販の電気犬とは多くの相違点がある。それは機械動物愛護団体の手によって品種改良もしくは改造されているからだ。機械動物愛護団体(以下機愛)は機械動物に優しく生身の動物には厳しい団体だ。機愛のスローガンは『機械動物にオイルを、一般動物に流血を』というもので動物愛護団体の対極に位置する。そんな機愛が捨てられた電気犬に施した措置はだいたい以下の通り。・太陽光発電・外観の個性・繁殖機能の搭載・曖昧なアラーム機能・各種楽器・サイレンにサイレンで対応・電池で強化・小物収納・他。特筆すべきは繁殖機能で一月に七、八匹子を産むし年中発情期なので増えるわ増えるわ。しかし学生、巨大蟻等により破壊補食されるので現在の所その数は安定している。ちゃっかり食物連鎖に組み込まれている心憎い野良電気犬である。補食される電気犬の外皮はオレンジの皮や高野豆腐、グミ等によって形成されている。もちろん木材、金属、ビニール、硝子の者もおり、それらは交配により遺伝する。楽器はある者と
ない者があるがたいていテルミンか鈴である。外皮によって音の響きはまちまちだ。余談になるが一度だけ機愛と爆裂地蔵の石工がコラボレートした事がある。第11シーズンだ。地蔵の外装を石工が作成し、内部を機愛が担当した。動物じゃないのに。木製カラクリ仕立てで眼が光り曖昧なアラームを搭載した地蔵は気難しい石工にも好意的に受け入れられた。しかし地蔵に内蔵されたテルミンが立派な石工の癪に障った。「和製マトリョミン糞喰らえ!」近寄ると音を出す地蔵は石工の金属バットによって粉々に粉砕された。破壊される直前、地蔵は「ヴー」と音を発した。チューニングも合っていなかった。こうして11シーズンは初代にして幕を閉じた。そういったわけで野良電気犬は性能、生息地域を少しずつ拡大拡張していった。サイレンに反応してサイレンを鳴らし、そのサイレンに反応してまたサイレンを鳴らすサイレン無限回廊を無視すれば無害と言える。