夕立

窓を開けると激しい夕立。急いで窓を閉めた。部屋は砂嵐。すると呼び鈴が鳴った届け物です。ドアから砂嵐が少しずつ外に漏れる。ドアを開けっ放しにしておく。届け物は段ボール送り主は親。前回は断崖だった今も1/4サイズになってベランダにある。砂嵐のせいで気が動転していた俺はその場で封を解いた。すると中から大量の蒸気が立ち上る。蒸気のせいで部屋中濃い霧それでも箱からは蒸気。とうとう視界ゼロになり蒸気は部屋の中で雲になった。嫌な予感がしてベランダへ避難する。外は夕立。部屋雲はほの黒い雷雲となって時々光る。そしてぽつりぽつりと雨粒が落ちると勢い良くざーっと降ってきた。ああ。外は夕立で部屋も夕立だ。俺は今その中間のベランダの庇の下で別々の夕立に挟まれている。正面も背後も夕立。憂欝。部屋がびしょ濡れになった人の気持ちは部屋がびしょ濡れになった人にしか分からないだろうし損害に個人差があるから結局俺の憂欝を理解できるのは俺のみ。電化製品と書籍書類が部屋にどれだけある事か。ああ全滅だ。布団衣類もだ。いっそ屋根
なんか無くなっちまえ。すると最後の家電、携帯に電話がかかってくる。母親「荷物届いた?昨日とれたばかりの夕立なのよー」無言で電話を切った。しかし「夕立をとる」の「とる」にはどの漢字がふさわしいのだろう。取る採る捕る摂る獲る執る盗る。正直どれでもいい好きにすればいい。放心したままタバコを吸って室内夕立を眺めていると、室外夕立はあがって空には虹がでていた。室内夕立は降り続けベランダ窓のレール溝を越えて俺の立っている足元にも水が流れてくる。まだまだ止む気配はなく憂欝な気分で空の虹を眺めた。隣には断崖。