仕事の帰り、歩道を遮るようににぴんと張った白い糸を見つけた。街路樹にぐるり巻いてあって歩道横の公園に糸は延びている。気になって糸の行方を辿ると公園のジャングルジムやブランコに巻いてあって、その先は公園の外の電柱。追って電柱から先もずっと延びていて次は売地の看板、住宅の柵、金網、縁石の溝、道路標識と続き自動販売機に至る。喉も渇いていたのでついでにジュースを買う。次は街灯に巻いてありバス停の時刻表、ガードレール、住宅の植木、アパートの手摺り、コンビニのゴミ箱と徐々に家の方向から外れていく。それでも追って路地裏や他人の家の庭、小さい林を抜けて神社の鳥居と辿ったところで面倒になって糸を追うのをやめた。糸は神社の外へも延々のびている。家の方向へ向かって歩き出し、5分も歩くと再び糸が現われた。糸の行方は気になるが無視して家までの最短ルートを歩く。家までもう一息という所でまたしても糸が現われた。住宅の門に巻いてある。それも無視してようやく家に着き、カーテンを開けると向かいの家のベランダの物干し竿から
隣のマンションの物干し竿にも糸。この話はここで終わりますが何の意図もありません。