駅を探す

私の住んでいる熊割町の名前は40年程前、一人の男が10mもある巨大熊を縦に真っ二つにしたという伝説に由来している。そんな訳で町の名産『くまわれ最中』は熊を型取った最中が半分に割れ、真っ赤な紅餡がはみ出した全国銘菓10000の一つに選ばれた銘菓だ。六個千円。なお紅餡の原料は謎だ。紅餡は錆びた鉄の味がする! 今日は駅が改築されたと言うので見に行く事にした。しかし改築前にも一度も利用した事がない。場所はだいたい知っている。だいたい。家から遠い。そのため普段は隣町の石伏駅を利用している。車を走らせること20分、今日はまだ一本も糸を見ていない。駅前広場に着き車を停める。閑散として一人も人がいない。駅舎に目をやると駅舎が糸でぐるぐる巻きになっている。事情を駅員に聞くと「町内のあらゆる建築物から建築力を少しづつ頂戴して新駅舎を建てています。建築力を吸われた建築物は脆くなります」と説明を受けた。あの糸は建築力が具現化した糸なのかと納得した。最後に駅員「脱皮は来月」と加え
た。ちなみに改築前の旧駅舎は亡霊駅となり『亡霊熊割駅』として亡霊線の仲間入りをした。月の光の屈折で亡霊熊割駅は今宵も淡く明滅している。