ズールとクルーザー3

過去二回クルーザーを買い逃したズールと再々度リサイクルショップに立ち寄った私およびズールはそこで再び一隻のクルーザーを散逸…「ぬう!」慟哭するズール「ク、クルーザーが、な、ない!」芝居じみて叫ぶ私。しかしズールは托鉢、当たり屋、托鉢兼当たり屋のバイトにより、再々度クルーザーを買えるだけの金銭を有していた。店員(攻彦)「何かお探しだろうか?」ズール「クルーザーはいかに?」傍らにて唇をぎゅっと噛み締め見守る我輩。攻彦「小生が所有しておる」ズール「なんと!」攻彦とてリサイクルショップ以外に托鉢、托鉢品の横流し、横領によりクルーザーを買う金銭を有し、正当な手続きを踏んだ上で購入していた。ズール「なにとぞ、貴殿のクルーザー、某に譲っては頂けぬだろうか」攻彦「ならぬ。あのクルーザーは我が館にて燭台として活用しておる」私「なッ?!しょくだ…(絶句・棒読み)!!」瞬間ズールの動きが止まる。そしておもむろに棚の傍から燭台を手に取りレジに並べるズール。三度身を乗り出し凝視する拙僧。店
員「ぬ!この燭台はクルーザーと同額の品!」ズール「即刻精算を済ませぬか!」店員「ぐぬ!」そしてズールは木目プリントでプラッチックの燭台を手に入れた。攻彦「ここまでの恥辱は初めてだ。貴様、名を何と申す」無視するズール。ズールの妹は燭台を収集しているのだ。三度ズールは泣く泣くクルーザーを諦め、アンティークでも何でもない燭台を買い、持ち金を使い果たした。「今回も残念だったな。クルーザーはどうする?」と私。するとズール「奴が手放すよう仕向けて見せようぞ」私「その言葉しかと受けた。期待しておるぞ」燭台は妹に「いらない」と言われた為どうしようか迷ってるとの事。ズールと私が店を出た後、静まりかえった店内にひとり残る攻彦。拳を堅く握りしめ唇を強く噛み血を流し怒りに震えている。攻彦「ぐぐぐ…なんなる屈辱!なんたる敗北!決して忘れぬぞ…燭台お買い上げの客人よ!!」続