空中墓標

昔この町にはピラミッドに似た建物があった。最初はピラミッドだったが今は違う。ピラミッドが建造される前はゴミ捨て場だった。不法投棄で回収されないゴミが折り重なってピラミッドの基礎が完成した。気を利かせた誰かがゴミ山のまわりに砂利を敷いて水捌けを良くした。さらに気を利かせた誰かがベニヤ板とブロックで外壁を造り四角錐のピラミッドを完成させた。ピラミッドは町で最も高い建造物になったが観光客は全く来なかった。地元の老人はピラミッドを拝み倒し、いくつもの宗教が生れたがどれもすぐ終わった。ある日ばか中学生がピラミッドでジェンガ崩しを始めた。ジェンガは十月十日に渡って行われ滑落、圧死等により何人か死者を出し、いよいよラストひとつの最上部の空中ブロックを残すのみとなった。ゴミ山も全て取り除かれ空中ブロックは上手く説明できない理由で空中に浮かんでいた。ゲーム開始から半数以下になったジェンガメンバーのばか中学生達は、謎の空中ブロックを見上げ「あのブロックを取った暁には、かつて泣く泣く処分したエロ本が戻ってく
るに違いない」と噂した。しかしその後も空中ブロックが撤去される事はなく、夢は夢のまま残された。かつてピラミッドがあった場所の周囲には砂利が敷いてあり、水捌けが良かった。空中ブロックを見るために当時は来なかった観光客も現在では訪れ、相変わらず地元老人は拝み倒し、宗教はそこそこ長続きしている。当時ジェンガメンバーだった生き残りのばか中学生も今はすっかり社会人となり、命を落したかつてのメンバー供養にいらなくなったエロ本を捧げ帰っていく。いつかエロ本が積もり積もって、ブロックに届く日を夢見ながら。