バナナとコアラの30億年戦争

この惑星にはバナナとコアラしか存在しない。他の生物は死に絶えたかもしくはバナナかコアラに進化した。海はなくほぼ陸地全土をバナナの木が埋め尽くし、敵対するコアラと共生している。バナナもコアラも日々進化している。バナナ(果実)はわずかな知性と屈強な筋肉を持ち感情はなく、果実を狙うコアラを強靱な筋肉で無常に絞め殺す。果実は柔軟性、若干の伸縮性があり、鋼のごとき堅固な外皮が筋肉果実を護っている。果実は樹木から房で垂れ下がるのではなく、一本一本個別になっており全長は2メートルまでに成長し、胴回りは地球における成人男性のそれに匹敵する。努力を惜しまず、熟す毎にその筋力は増す。コアラの知性は愚鈍そのものであるが動きは俊敏であり、恐るべき殺傷能力を有する爪にて鋼のバナナ皮をもたやすく切り裂き、剛なる果実をも鋭い牙にて咬みちぎり食す。慈悲深く涙もろいが喜びや怒りといった感情はなく、感情が昂じると声を殺しさめざめと静かに泣く。体躯はバナナ果実とほぼ同等であり、灰褐色の体毛は長く、寒冷な惑星の気候
にも適応している。群れをなさず独力にてバナナを狩り、等しい確率で狩られる。食物はバナナしかなく常にコアラは飢え、バナナは貪欲にコアラの養分を欲している。こうして現在まで二種の生物の争いは果てることなく続いている。スプーンを使ってバナナを食えば、文明人といえるだろうか?