怪力翁(後)

さらに誰かがつぶやいた。「こいつぁあいんちきに違えねえ!」この一言により反翁派が一斉に口火を切った「そうだ!いんちきだいんちきだ!」「ぜったいずるをしてる!」「ひどいやつだ!」とみんながおきなをののしった。その日の帰り、クラス全員が怪力誇示品を町のゴミ捨て場に捨て(後にピラミッドの礎となる)、そして誇示品、取っ手のない冷蔵庫のドアの表面に赤のマジックででかでかと『怪力翁はひどいいんちき野郎』と書き、目につきやすい場所に置いた。改行すべきだろうがしない。一年後の12月25日。やはり翁は来た。そして怪力誇示品(L字形に曲がったコンロ)と供にVHSテープが添えてあった。ラベルには『怪力証拠』とある。さっそく再生すると、一人のマスクを被った男が己の筋力のみでコンロをぐにゃりと曲げる映像が映し出された。私はその数分の映像を食い入る様に見つめ、何度も巻き戻し見続け、こうふんしてとてもすごいとおもった。始業式、クラス一同の元にも誇示品とテープが届いていた。「や、やはりほ
んものだったんだ…(ぶるぶる)」と誰か。すると反翁派代表「いや、やはりいんちきだ。テープをくりかえし検しょうしたけっ果、いくつかのしょうこを見つけた」その幾つかの証拠とは以下。1、マスクを被っていてとても怪しい。2、離れた位置から固定カメラで全身が映っているので何をしているのかよく分からない。3、人物に影が映っていないのが何より偽の証拠。という事でまたしても翁はいんちきの上塗り呼ばわりされ、またもやゴミ捨て場に誇示品と供に『怪力いんちき影なし野郎』とでかでかとスプレーされた。改行。さらに一年後のクリスマス。その年、怪力翁は誇示品を提出(?)しなかった。代わりに一通の手紙が。手紙には『来たる12月31日午前10時より小学校グラウンドにて【生怪力誇示】を行います。見物料無料。不要な金物、家電、堅物持参。K.O.』とあった。「こ、こりゃあすげえ!」と私は歓喜し、大晦日を待ちわびた。しかし大晦日前日に風邪をこじらせ、年明けまで布団で過ごすはめとなった。その間、
私は生怪力誇示を観れない悔しさに何度も寝返りをうち、苦悶し号泣嗚咽した。そして始業式、私以外の全員が生怪力誇示を観に行っていた。そこで私は反翁派代表に「どうだった?」と問うと反翁派代表、恥じいる様に「ありゃあ、モノホンだゼ」終