リカーンとケディネー2

リカーンは相変わらず隣にガールフレンドのアメリカを乗せ、制限速度をきっちり守ってドライブを続けていた。後部座席の蔭に、命を狙うケディネーが潜んでいるとも知らずに!しかし当時は真っ赤だった自慢のスポーツカーも、今や風雨による腐食、傷ヘコミにより塗装は剥げ落ち、赤錆によってその車体を赤く見せていた。そんな愛車でリカーンは毎日ドライブを続けた。リカーンは「止まったら死ぬ」という強迫観念に押し潰され、何があろうと止まらなかった。給油であろうがタイヤ交換であろうが走りながら行った。そんなリカーンを優しく見守るアメリカは現在妊娠4ヵ月だ。腹をさすりながら「ベイビィ…」と呟く以外、ふたりの間に会話はない。そして後部座席でリカーンを殺す機会を伺っていたケディネーこと『えぐれ脇のケディネー』は身動きがとれぬまま「ベイビィはどんな顔だろう?もしかしたら実は俺が親かもしれない!」と一切根拠のない別人想像妊娠を楽しんで、孤独と狂気を紛らわしていた。紛れていると本人は思っていた。そんな三人を乗せた赤錆車は現在、
人気のまったく無い一本道をひたすらのろのろと走り続け、終わりの見えない完全純粋ドライブを楽しんでいた。すると突然、脇道から二人の女が姿を現した。