だいたい死んでいる

いま道の真ん中で手を振る人物メロンの前方数メートルを、赤錆たスポーツカーはのろのろと前進していた。そこで人物メロンは驚愕の叫びを発した。「め…!?」そして轢かれた。のろのろと。そして死んだ。即死。リカーンは衝撃を感じたが、そのまま前進した。隣のアメリカはこの衝撃をベイビィの胎動だと思い、微笑した。ケディネーは黙って成り行きを見守った。車の後ろを付いて歩く姉妹の妹が何かに躓いた。「あっ死体だ!」とピーニイ。「これは、死体だわ」とポーニイ。そこでようやく姉妹はドライバーに声を掛けた。「この死体を街まで運ぶから、車に乗せるわ」ドライバー、無言。姉妹も無言で死体をバックシートに投げ込もうとする。しかしバックシートににはケディネーが!「あら!」と姉。ケディネーはにわかに事態を察し、急速に緊張が高まる。「ねえドライバーさん、先客が乗ってるわ」しかしドライバー無言。万事休す!もはやここで殺すしかないとケディネーは思い、ナタを握り締め立ち上がろうとしたが、ケディネーは立ち上がれなかった。「!?
」するとポーニイ「なぜあなた達は後部座席に白骨死体を乗せてドライブしているの?」この言葉に最も驚いたのはケディネー本人だった。実のところケディネーはとっくに死んでいた。それとは知らず意思だけが留まっていた。ついでだがリカーンも死んでいた。ケディネー同様、本人が気付いていないだけの実体あるドライブ幽霊だった。蛇足だがアメリカという女は存在しない。始めからリカーンとケディネーの幻想だった。もちろんベイビィもいない。余談だがピーニイは数年前に他界している。すなわちポーニイの幻想だった。 そして人物メロンの死体がケディネーの白骨の上に乗せられ、死体リカーンの惰性運転により車は休みなくのろのろ走り続け、その後ろをポーニイが妹の幻覚と並んで歩いた。行き先は誰も知らない。