うんこ騒動とその波紋4

秀犬・チャーリイは、深く恥じていた。犬だって、時には恥じる。大勢の人間の前で、不様な醜態を晒してしまった己を、あれからずっと恥じていた。かつて『秀犬コンテスト』各賞を総なめにし、四年連続、最優秀ドッグに輝いた、誇り高き、あの、チャーリイが――である!なぜあの時、あれほどまでに一塊の糞便ごときにビビっちゃったんだろう、俺。と、あの日以来ずっとチャーリイは考え続け、夜もあまり眠れず、ご飯は味気なく、お散歩はちっとも楽しくなかった。チャーリイの中で、今まで培ってきたあらゆる出来事や感情が、全て色褪せて思われた。すべてあのファッキン糞のせいだ!ちくしょうちくしょう!ファックファックファックファック!わんわんわんわん!チャーリイは激昂し、暴れ、吠え、高速で尻尾を振ったり、ボールを追い回したり、穴を掘ったりして、なんとか怒りを鎮めた。するとチャーリイはいつの間にか、自分の首輪が外れている事に気付いた。暴れた時に外れたのかしら?…自由!俺は自由だわんわんわんわん!チャーリイは狂った様に歓喜の雄叫びを
あげた。わんわん!チャーリイの雄叫びは夜の住宅街に轟き、近隣住民は不信に思ったが、なおもチャーリイは雄叫びをあげ続けた。わんわんわん!あの、チャーリイが―――――である!そしてチャーリイはひとつの考えに思い至った。「あの、ファッキン糞の行方を追い、破壊してやる!」こうしてチャーリイは人生初の敗北を受けた、憎ましい敵糞(アダグソ)を求め、夜の街へ旅立った。しかしチャーリイはこの時、己の追う宿敵が、高等知性糞便『ウォンク』だとは、知る由もなかった。〜つづく〜