《評》

まずは書き出し「お前はよくやったよ…」に対する「お前は誰だ?」というつっこみはあえて不要である。この不明瞭かつ幻惑的な謎のヴィジョンは、いったい何なのだろう?続くベム、ミーナ、ケント、バッフルという魅力的ではあるがどことなくベタな人物造形は、完全に出オチである。バッフルの説明の最後に、なぜか『ミーナにだけは逆らえない!』と『!』が付いているが、これはスパイスである。だがこのスパイスは無味無臭栄養価ゼロであり、その後キャラクターが活きることはない。後半、駆け足のメインプロットには息つく暇もない。深い詮索は避けるが、きっと書き手の集中力が切れたんだろう。 私には、あの時のベムの勇気、ケントの機知、バッフルの優しさ、そしてミーナの悲鳴が、忘れられない…。