レッカー3

保彰はいつからかレッカーされていた。その保彰をレッカーしているのは三つ子の兄弟和彰だった。和彰は兄弟をレッカーしているとはつゆ知らず、仕事を辞めることを考えていた。仕事を辞めたらどうしよう?久しぶりに信彰でも尋ねてみようか。最後に会ったのはいつだっけ?正月もずっと帰ってないし、何年か前の誰かの葬式で会ったのが最後だ。誰の葬式だっけ?誰が死んだんだ?あ、俺だ。自分の葬式に生きたまま参列したんだった。自分の死体もちゃんと棺にはいっていた。自分の死体を眺めるのは不思議な気分だった。信彰も保彰も泣いていたし自分も泣いていた。じゃあ俺は四つ子だったのか?いや違う。あれは自分だった。ミイラみたいな自分の死体だった。ミイラでもはっきり自分だと見分けがついた。だとしたら今ここにいる自分は誰だ?誰?と思って梓は目を覚ました。弟の慶太が泣きながら自分の名前を叫んでいた。慶太の顔は頬骨が高くて目が窪むんでまるでミイラみたいだった。弟はまるっきりミイラみたいだった。またあの時みたいに唾を飲ませたらミイラみたい
じゃなくなるかしら?思うと同時に梓は弟の口元めがけて唾を吐こうと口を開いた。すると口から大量の血が流れ、驚いて血を飲み込んだはずみにむせてしまった。むせながら唾を吐けない悔しさに震え、むせ続けてようやく落ち着いたところで絶命した。レッカーされたのだ。目の前で姉が命を引きとった様子を慶太は黙って見守った。今や叫ぶ気力もなかった。自分が徐々に衰え体がみるみる痩せ萎んでいるのがわかる。あっという間に慶太はミイラになって死んだ。こうして弟も姉を追うようにレッカーされた。その慶太の級友で前輪の下敷きになっている竜司も今やすっかり息絶え、その死体はやっぱりミイラ化していた。この時点で老人ホームのエレベーターに残されたミイラの数は5体になっていた。ミイラ定数はしっかり守られていた。ミイラ化した死体、そうか、ミイラ化したのは死体だったのだ。ミイラが死体になった訳でも、舌の歯がケツに食い込んでアナルを拡大させた訳でもなかった のだ。どうしよう、ミイラが死体になる事は出来ない、いや、出来る、あの人なら
ミイラを死体化する事は出来るんじゃないか。そうつぶやくと慶太はまず自分 が死体化する為には生きていなければならない、とつぶやいてから上半身を起こしたとつぶやいた。メリメリ、、、ミイラ化していた慶太の腰は割れた。それで も慶太は、このままではあの人の所へ行く事は出来ない、なぜならば私の腰が折れているからだ、とつぶやき右膝を立たせて起き上がろうとした。メリメリ、、 慶太の右膝は折れた。慶太は、あの人の所へ行かなければ行けない、なぜならば私の腰と右膝が折れているからだ、とつぶやき右手で折れた右膝をひとまずくっ つけようとした。メリメリ、慶太の右腕は折れた。あの人の所へ行かなければ、と慶太はつぶやく、メリメリ、慶太の顎が外れた。もうつぶやく事も出来ない、 と慶太はつぶやくとすぐさま車に乗りハンドルを握ろうとすると、メリメリ、、慶太の右腕が折れた。慶太は車の後ろに乗せたミイラの数を確認してアクセルを 踏む。メリメリ、、慶太の右足が折れた。メリメリ、、ふふ、と慶太はつ
ぶやきながら右折した。
[後半執筆 wertyu]