名文紀行19

●五年間を過した町について、一つだけコメントしておこう。
消えちまえ!
●「新しいエロ本くれよ、オナニーって本当に楽しいな」といいながら僕の肩に腕をまわすのだった。僕は思わずその腕を払いのけたくなった。もはや普通のオナニストになった梓は魅力のない二級品だった。
●公衆便所を自転車で通り抜けようとしたが、段差に車輪がひっかかり、僕は転んで小用の便器に腰掛けてしまう。すると、そこへ弟がやって来て「王様!」という。
――島田雅彦『僕は模造人間』より