名文紀行20

●学術論文にもポルノ映画のようなストーリーはある。詰まるところ、ダーウィンの『種の起源』も様々な例証を時に強引に結びつけなければ、収拾がつかなかったのだ。小さな変異が積もり積もって、動物は変わり、最終的に人間になったといいたいためにストーリーを書く。大変な執念だ。人間の中枢というのはやはり、ストーリーをこしらえるようにできているのだろうか?
●「ヒトの雌の個体差にはあまり興味がないんで、君一人で充分だよ」
――島田雅彦『ドンナ・アンナ』より