灰皿

なにかを呪いたいなにかを呪いたいと思い、目の前にある灰皿を呪った。灰皿はふわっと空中に浮いてなかの灰がこぼれた。ずっとそのままなのでタバコを吸って浮きっぱなしの灰皿に灰を落とした瞬間、同時に灰皿も落下した。
もう死のうもう死のうと思い、ひとまず死ぬことにした。リサイクルショップで売られていた自分の骨を買い、メールで何人かの知り合いにお焼香を頼むと「お焼香」という内容の返信が何通か来た。墓石は高いので文庫本を百冊ぐらいガムテープでぐるぐる巻きにして自分の名前と戒名、今日の日付をマジックでしっかり書いて墓石が完成した。自分の骨と墓石を両脇に抱えてバスで近くの山に行って適当な場所に骨を埋めて帰った。つぎの日、墓参りに行き線香と花を自分の墓に捧げて手を合わせた。
数日すると宅急便が届いたのであけてみると自分の骨だった。もう必要ないからリサイクルショップへ売ると、またしてもなにかを呪いたいなにかを呪いたいと思い、またしても灰皿を呪った。しかし今回は灰皿は浮かず、呪いが効かなかったのかと灰皿を眺めると吸い殻だと思っていたものがぜんぶ骨であることに気づいた。むかついたので骨を便所に流し、テレビをつけるとかねてから噂されていた俳優が入籍したと報道されていた。