狭路殺法

人ひとりがどうにか歩ける通路のエロビデオ屋で作品を吟味していると、私から2mばかり離れた場所に巨躯の男がやはり作品を吟味している。私自身、吟味に熱中するあまり気づかなかったが男の反対側通路を見れば、なんとやはり2mばかり離れた位置に先述の男そっくりの巨躯の男(服もお揃い!)が作品を吟味しているではないか。いわば鏡あわせの巨躯私巨躯でありさすがに慄然とする。男ふたりはじりじりと同時に間合いを詰めてくる。はたと気づけば時すでに遅し、しまった、これは狭路爆圧殺法ではなかろうか。よっく見れば拭き逃れた血痕がビデオ棚にちらほらと見受けられる。過去、何人がこの場所で……い、いかん、しかし退路なし…!巨躯の男共との距離はすでに1mとない。潰される、と感じた矢先、男共は同時に接近し、その口元には笑みが浮かぶ。まるで磁石のように互いが接近したところで私は思わず目をつむる。南無三!その刹那、巨躯の男共がぶつかり逢い骨肉がはじける音が狭いエロビデオ屋に轟く。ふたりの巨躯は半身ずつ爆裂
し融合した姿であたふたと辺りを見回す。だがそこに私の姿はない。私は先日、歩調殺法の男と崖から落ちて死んだのだ。