蕎麦の話

蕎麦はおよそ75点ぐらいの食いもんである俺はそうおもっている。うまい蕎麦でも85点ぐらいのもんだとおもっている。単品ではどうしても100点には届かない食いもの、それが蕎麦である。たぶん!天ぷらとかミニ丼、お新香セットで100点になる。と思う。蕎麦単品だけではならない。場合によってはなるが、それは後にまわす。そもそも蕎麦とは二八すなわち16文であって当時の長屋の家賃が530文、大工の給料が一日520文だというから家賃が安いのか大工の給料がたかいのか不明だがまあ蕎麦は安い。ゆえに立ち食い蕎麦の低価格こそがすなわち蕎麦本来の値段なんじゃねえの?そこで気に入らねえのがちょっとお高いお蕎麦屋さんである。これ見よがしに手打ちしてる人間をガラス張りで晒す感じのお店である。たとえばあれが根元だけ黒い金髪ピアスだらけタンクトップでタトゥーまみれのにーちゃんがにやにや半笑いで蕎麦打ってたらどうか。65点だったら「まあいい方か」となるだろうし70点なら「やるなあのピアス野郎」
となる。しかしいかにも職人という翁(退職後に趣味が高じて始めた可能性あり)が70点の蕎麦を打ったら標準以下となり評価ははなはだ厳しくなる。おそらく「ヤンキー母校に帰る」みてえな理屈だと思うがドラマみたことないし比喩に自信がない。つまり立ち食いの蕎麦がうめえ、という話である(!)。くわしくは押井守のなんかハズしちまった感の強い映画を見ていただきたいが立ち食いの立ち食いたる所以は70点の蕎麦をジャスト70点で提供するところにある。100点を期待して70点だとがっかりするが70点だと思って70点の蕎麦を食うと70/70であって満足する。押井守のあれもそういう気分で見れば満足できるが映画と蕎麦は違う。この際だから『てめえ満足度』の話をする。てめえ満足度とはてめえが満足したら満足、という度である。度。前に兄と居酒屋で飲んだとき兄が「鶏の酢醤油に葱」みてえなのを注文して、それを食いながら「うめえな、これうめえな」と連発していたが俺はこれに対し「腹減っ
てたんじゃねえの?」のひとこと。まさにてめえ満足である。俺もその「鶏の酢醤油なんたら」をつまんだが想像どおりの味であって「うめえ」を連発するには事足りぬ。いわば普通。つまりてめえが満足するにはてめえが満足すればいいという恐ろしく明快な理屈である。強引にまとめりゃ腹減ってりゃたいがい旨ぇ。そして蕎麦がジャンクフードでなければ日本のジャンクフード文化が危ぶまれるので蕎麦はジャンクフードであるという認識を今後みな様にはたかめていってもらいたく思うッッつ!たかめなくても、いいッッつ!