ハッピークリスマス

私の住む地域には、79年に一度しかクリスマスが訪れない。だが私はクリスマスを経験している。2才の時だ。よって記憶は唯一ひとつしかないが、話によれば、それは盛大な、かくも盛大な行事だったと聞く。樹齢400年の御神木を切り倒し薪とし、それ以外の森も焼き払い、すべての家畜・ペット・ニートをアルミホイルで包み焼きにし町民総出で226226晩ぶっ続けオールナイトモーニングアフタヌーンナイトモーニング…続けられ、その間、町の行政・商業・生産などは全てストップしたためクリスマス中盤には町は完全に破綻し、その時点で町民の4割は過労・疲労・自然死で死亡し、逃げようにも唯一の道路は祭りの開始と同時に爆破されており、つり橋もぶった切られていたので陸の孤島と化し、それでも住民は残り100日以上の宴を消化しなくてはならない。だが食料も尽きている。そこで行われたのが食人、である。これにより凄惨な殺し合い、血みどろ阿鼻叫喚の命を懸けたバトルロイヤルが始まった。結果、クリスマスが終ってみると生き残り
はわずか17人だった。その後、忌まわしくも呪われし町は、残された住民により自主的にダムに沈められた…そして鎮魂モニュメントとして巨大噴水こと逆ダムが建造された。そのクリスマスの生き残り17人のうちの一人が…2才の私である。次のクリスマスまで半世紀と少々、齢80を越えた私にアレが噛み切れるだろうか?不安はあるが、もう一度だけ味わってみたいものだ。2才だった私が覚えている唯一の記憶、日々たかまる渇望を伴った忘れ得ぬ味覚…そう、人肉の味を!